
予防保全と予知保全の違い。製造設備の安定稼働には“監視×データ活用”がポイント
さまざまな生産設備が稼働する工場において、生産ラインを安定稼働させるための設備保全は重要な業務の一つです。
なかでも「故障や不具合を未然に防ぐ」ことを目的とした設備保全の方式に、“予防保全”と“予知保全”があります。
工場の保全部門・品質管理部門の担当者のなかには「予防保全と予知保全はどのような違いがあるのか」「生産ラインの稼働率を向上するにはどうしたらよいか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、製造設備の保全方式となる予防保全と予知保全の違い、安定稼働を実現するポイントについて解説します。
なお、設備保全の重要性についてはこちらの記事をご確認ください。
製造業の保全業務に役立つ情報をまとめた資料を用意しています。
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予防保全とは
予防保全とは、日常点検に加え、事前に作成した保全計画に基づいて定期的に設備の点検やメンテナンスを実施する保全方式です。生産設備が故障する前にメンテナンスを行い、生産ラインの停止や不良品の発生を防ぐ目的があります。
メンテナンスを実施する基準には、主に3つのパターンがあります。
▼予防保全によるメンテナンスの実施基準
基準 |
メンテナンスのタイミング |
実施例 |
時間基準保全
(TBM)
|
事前に設定した一定期間ごとに実施 |
3ヶ月に1度、設備洗浄を行う
1年に1度、オーバーホールを実施する
|
利用基準保全
(UBM)
|
設備の稼働時間や運転回数などを基に実施 |
稼働3,000時間で消耗部品を交換する
運転回数1,000回でオイル補充を行う
|
状態基準保全
(CBM)
|
設備の状態を測定して、劣化の進行程度に応じて実施 |
モーターの電流を定期的に測定して、基準値を外れる場合に交換する |
予防保全では、設備の稼働状況に応じて最適なメンテナンス計画を立てることが求められます。
実施のタイミングが遅いと故障が発生するリスクがあるほか、オーバーメンテナンスになると作業工数や部品交換のコスト増加につながります。
予知保全とは
予知保全とは、設備の稼働状況をリアルタイムに監視して、異常や劣化の兆候を検知した際にメンテナンスを実施する保全方式です。
生産ラインの停止や不良品の発生を未然に防ぐことに加えて、保全業務にかかる作業工数の削減、メンテナンス頻度の最適化を図る目的があります。
なお、予知保全は、予防保全の一種に当たる状態基準保全(CBM)をベースとして異常の検知をシステムやセンサーによって実施する保全方法といえます。
予知保全についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
予防保全と予知保全の違い
予防保全と予知保全は、どちらも“生産設備の故障や不具合を未然に防ぐ”という目的のもと実施しますが、メンテナンスのタイミングやきっかけが異なります。
▼予防保全と予知保全の違い
予防保全 |
予知保全 |
|
メンテナンスのタイミング |
定期的に実施 |
設備の状態に応じて実施 |
修理・部品交換のきっかけ |
保全計画に基づく |
異常兆候を検知したとき |
予防保全は、保全計画に沿って定期的に点検やメンテナンスを実施します。設備に異常が見つからない場合でも、一定の期間や稼働時間などに基づいて修正・部品交換を行います。
一方の予知保全は、システムが異常の兆候を検知したタイミングでメンテナンスを実施します。メンテンナンスを実施する期間や稼働時間の基準などは定めずに、設備の異常兆候が見られた際に修理・部品交換を行います。
工場の設備保全は予防保全から予知保全へシフト
予知保全は、予防保全よりも一歩進んだ保全方式として導入が広がっています。
従来の予防保全は、計画的に設備保全を行えることから社内のリソースやコストを管理しやすい利点があります。しかし、以下のような問題点もあります。
▼予防保全の問題点
- 次のメンテナンスまでに突発的な故障が起きる可能性がある
- 不必要な部品交換が発生すると保全コストの増加を招く
- 保全計画を実行するための人員・時間を確保する必要がある など
予知保全の場合には、設備の状態を継続的に監視して異常の兆候を検知することから、予防保全で起こり得る突発的な故障のリスクを低減できます。これにより、可用性の向上やダウンタイムの最小化を図ることが可能です。
また、不必要な修理・部品交換をなくせるため、保全業務の作業工数や部品代を削減できるようになります。生産設備の安定稼働を目指すには、予防保全から予知保全へとシフトすることが重要といえます。
製造業における予知保全の導入ポイントについてまとめた資料を用意しております。ぜひご活用ください。
IoTシステムによる監視×データ活用がポイント
予知保全を実現するには、IoTシステムを活用したリアルタイムによる監視と設備データの収集・分析を行うことがポイントです。
設備の故障や不具合を防ぐだけでなく、メンテナンスの適正化によるコストの削減や、設備保全データの集計・分析に基づいた保全計画の見直しにつなげられます。
アットフィールズテクノロジーでは、工場の予知保全に役立つソリューション『@Fields Edge』を提供しています。多種多様な方法で設備データを収集して、稼働状況の可視化や異常の検知を行うことが可能です。
▼@Fields Edgeの主な機能
機能 |
概要 |
設備データの収集 |
PLCやアナログ出力、IoTセンサーなど、出力形式の異なる設備データを収集する |
設備データの加工 |
収集した設備データの出力条件を設定して、分析や活用ができるデータへと自動で加工・処理する |
稼働状況の可視化 |
設備データを一元管理して、各パラメータの数値やロット情報、稼働時間・稼働率などを画面表示する |
異常の判定・設備制御 |
設備機器の変化・状態を表すパッシブパラメータ(※)を取得して異常の兆候を判定し、設備へのフィードバック制御を行う |
アットフィールズテクノロジーのソリューションを活用した予知保全の事例は、こちらで紹介しています。併せてご確認ください。
※パッシブパラメータについて:設備データにおいて、設定パラメータ(インプット)を“アクティブパラメータ”、受動パラメータ(アウトプット)を“パッシブパラメータ”と定義しています。
まとめ
この記事では、予防保全と予知保全について以下の内容を解説しました。
- 予防保全と予知保全の定義・目的
- 予防保全と予知保全の違い
- 予防保全の問題点と予知保全への移行について
- 予知保全を実現するポイント
設備の故障を未然に防ぐことを目的とする予防保全と予知保全では、メンテナンスのタイミングや修理・部品交換を行うきっかけが異なります。
予防保全は、社内のリソースを調整しながら計画的に保全業務を行える一方で、突発的な故障やオーバーメンテナンスが発生する可能性があります。
生産ラインの稼働率向上やメンテナンスの最適化、ダウンタイムの最小化を目指すには、異常の兆候が見られた際に保全を行う予知保全の導入が重要といえます。
アットフィールズテクノロジーが提供する『@Fields Edge』は、生産設備データを活用した稼働状況の監視や異常の検知、データ分析などを行えるソリューションです。予知保全や工場のIoT化を目指す方への一貫したサポートを実施します。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。