製造業が抱える品質管理の課題と効率化を図るポイント
製造業では、定められた納期までに製品を製造して、一定水準の品質を担保するための品質管理を行います。その品質管理では、以下のような問題が生じるおそれがあります。
- ヒューマンエラーによって不良品のチェック漏れやミスが発生する
- 不良が発生した場合に要因を特定できない
- 手戻りによるロスで納期の遅延が発生する
製造現場で品質管理を行う担当者のなかには「安定した品質を保つためにはどうすればよいか」「品質管理を効率的に行う方法はあるか」などと対応に悩まれている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、製造業における品質管理の構成要素を踏まえつつ、品質管理でよくある課題と効率化するためのポイントについて解説します。
なお、製造業の生産性向上を図るポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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品質管理を構成する3つの要素
製造業の品質管理は、以下の3要素から成り立っています。
▼品質管理の3つの要素
- 工程管理
- 品質検証
- 品質改善
工程管理とは、作業の工程や手順を管理することです。従業員の作業工程を標準化して品質のばらつきを防いだり、作業に用いる設備の維持管理をしたりすることが含まれます。
品質検証は、製品の品質を検証して一定の品質を保つことを指します。完成品だけでなく製造工程の各段階で検査を行い、不良の発生を防止します。
品質改善は、不良品の予防や再発防止のための施策を行うことです。検査工程で見つかった不良に対する根本原因を特定して、製造工程や検査方法の見直しを行います。
製造現場における品質管理の課題
不良品の発生を防いで、効率的かつ安定した生産体制を構築するには、工程管理・品質検証・品質改善といった3つの要素で管理を行う必要があります。
しかし、以下のような課題を抱えている製造現場も少なくありません。
データの活用が難しい
品質の向上を図るには、製造工程や機器に関するデータの収集と分析が重要となりますが、収集したデータの活用が難しく改善が進まないといった課題があります。
▼データ活用に関する課題
- 未集計・無編集のデータから、目的に応じて必要なデータを抽出することが難しい
- 取得データをそのまま監視するだけでは因果関係を示せないことから、発生要因を特定できず対策に至っていない
- データが膨大で見える化が進まず、さらに何をどう見える化するかのデザインが難しい
検査品質のばらつきやヒューマンエラーが発生する
人の手・目視で品質検査を実施している場合、従業員によって作業方法や手順が異なり、検査の品質にばらつきが生じる可能性があります。
さらに、人作業に関しては、疲労による集中力の低下によって、不良箇所の見落としや検査工程の飛びなどのヒューマンエラーが発生するリスクもあります。
品質管理の工数増加や属人化が発生する
製造工程が複数に及ぶ現場において、人の手・目視による検査や設備の維持管理を行っている場合は、従業員の作業工数が増加しやすくなります。
また、品質の検証やデータ活用などの作業が特定の従業員が持つスキル・経験に依存してしまい、業務の属人化が起こることも課題の一つです。
品質管理の工数増加や属人化は、製造現場全体の生産性を低下させるおそれがあるため、効率的な生産体制へと改善を図ることが求められます。
製造業の品質管理を効率化するポイント
製造業の品質管理を効率化して生産性を高めるには、データの集約や分析、作業の自動化がポイントとなります。
①設備機器の稼働データを一元管理できる体制を構築する
IoTやAI、クラウドシステムなどのデジタル技術を活用して、設備機器の稼働データを一元管理できる体制を構築します。
製造現場で収集した膨大なデータを一元的に蓄積・管理できるようになると、非効率な製造工程や不良が発生しやすい箇所などの改善点を見える化しやすくなります。
また、製造過程で発生したトラブルごとにデータを分解することで、現象別に変化を捉えられるようになり、異常検出の精度と速度を高められます。
▼品質管理におけるデータ運用のコツ
- 常時監視するデータと要因特定に使うデータを分ける
- 製造過程におけるトラブルごとに分解して分析する
- データを誰でも判断できるように見える化する
②人の手・目視による作業を自動化する
IoTやAIなどを活用して、人の手・目視で行ってきた品質管理の作業を自動化することも有効です。
AIによる品質管理は、人の手・目視による検査と比べて速度が向上するほか、ヒューマンエラーや属人化の防止にもつながります。その結果、不良率の削減や品質の安定化に結びつくことが期待できます。
▼ITの活用で品質管理を自動化する例
- 産業用ロボットを導入して、検査工程の一部を自動化する
- IoTセンサから収集した稼働データを基に、AIが予兆検知・異常検出・要因特定を行う
- AIの画像処理技術を用いて外観検査を行う
③グラフを作成して設備稼働時データを見える化する
製造工程や設備、作業内容を分析して、生産性の高い運用体制へと改善を図るために、グラフを作成して設備稼働データを見える化することが有効です。
設備機器から収集したデータを基にグラフを作成することで、以下のような情報を把握できるようになります。
▼グラフの作成によって把握できる情報
- 生産ラインのなかで不良が発生しやすい工程
- 各設備機器の状態監視による故障予知
- 人作業に依存する加工時間のバラツキや製品の滞留時間の品質影響
製造現場で収集した設備機器の稼働データを見える化することで、現状の問題点・改善点を把握できるようになり、品質管理の改善策を講じられます。
なお、グラフの作成にあたって膨大な稼働データを人の手で整理したり、見やすく加工したりする作業には時間を要します。効率的に作業を行うには、データを集約して自動で見える化・分析できるBIツールの活用が有効です。
まとめ
この記事では、製造現場の品質管理について以下の内容を解説しました。
- 品質管理を構成する3つの要素
- 製造現場における品質管理の課題
- 品質管理を効率化するポイント
製造現場の品質管理は、不良品の発生や納期の遅延などのトラブルを防ぐために欠かせない作業です。人の手・目視で管理している場合には、ヒューマンエラーや検査品質のばらつきが発生しやすいほか、データの活用が進まない、工数が増加するなどの課題があります。
このような課題を解決するために役立つのが、システムやAIなどのIT技術です。稼働データの一元管理をはじめ、人による作業の自動化、グラフ作成による見える化を行うことで、製造工程や検査方法の見直しを図り、品質の安定化につなげられます。
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