設備の稼働監視とは。システムの導入で実現できることや選定のポイント
あらゆる設備が稼働している工場では、不具合・故障による運転停止や不良品の発生によって生産に大きな影響を及ぼす可能性があります。
設備停止によるトラブルや生産コストの損失を防ぐには、常に設備の稼働監視を行い、速やかな修理・メンテナンスと復旧対応につなげることが重要です。
工場の情報システム部門や技術部門に携わる管理者のなかには「設備の稼働監視に課題があり、システムの導入を検討している」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、工場における設備の稼働監視に関する課題やシステムの導入によって実現できること、システムを選定するポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.設備の稼働監視とは
- 2.設備の稼働監視に関する課題
- 3.稼働監視システムで実現できること
- 3.1.➀作業員の業務負担を削減できる
- 3.2.②異常予兆を検知して設備停止を防止できる
- 3.3.③リアルタイムで稼働状況を可視化できる
- 4.稼働監視システムを選定するポイント
- 4.1.導入目的や既存設備と適合しているか
- 4.2.拡張性があるか
- 4.3.稼働データの整理・分析に対応しているか
- 5.まとめ
設備の稼働監視とは
設備の稼働監視とは、製造現場にある生産設備の稼働状況をリアルタイムかつ継続的にモニタリングすることです。稼働監視の対象には、以下が挙げられます。
▼稼働監視の対象
- 工作・組立機械や搬送機器の運転状況(稼働回数・時間)
- 制御装置のパラメータ
- 計測機器の測定値
- 生産ラインや各施設の利用状況 など
工場で設備の稼働監視を行うことには、主に以下の目的があります。
▼稼働監視の目的
- 生産設備の動作異常を早期に発見して設備停止を未然に防ぐ
- 生産設備の予防保全によって設備のパフォーマンスを維持する
- 生産設備の稼働実績を把握して稼働率が低い生産工程の改善を図る
生産設備の稼働状況を可視化することにより、動作異常や性能不良・低下を早期に発見して修理・メンテナンスを行えます。設備停止によるロスを抑えられるため、生産効率の維持・向上や生産コストの削減につながります。
なお、工場の安定稼働を目指すための予防保全については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
設備の稼働監視に関する課題
人による巡回点検やカメラを用いた目視でのモニタリングによって設備の稼働監視を行っている現場では、さまざまな課題があります。
▼人に依存した稼働監視の課題
- 作業員に業務負担がかかる
- 異常の発見が遅れる可能性がある
- 個々作業員の判断によるばらつきの発生
- 膨大なデータを整理・分析することが困難 など
稼働監視の対象は多岐にわたります。定期的に巡回して目視点検や手作業による記録を行っていると、作業員の業務負担が増加して製造現場の人手不足を招く原因になるほか、品質管理において最も危惧しなければならない帳票の記載ミスにもつながります。
また、24時間365日にわたってすべての設備をリアルタイムで監視することは難しいため、異常の発見が遅れてしまう可能性があります。修理や復旧対応までにタイムラグがあると、設備停止による生産ロスが起こるリスクも生じます。
さらに、各設備によって取得する稼働データや異常を判別する指標・数値が異なります。膨大なデータを手作業で整理・分析するには限界があるため、正確な稼働状況を把握することが難しいといった課題もあります。
稼働監視システムで実現できること
人に依存したアナログな稼働監視の課題を解決するには、システムを活用して自動化を図ることが重要です。稼働監視システムを導入することで、自動で設備の稼働データを収集して稼働状況の可視化や異常の検知、データの分析などを行えます。
➀作業員の業務負担を削減できる
稼働監視システムを導入すると、各設備の稼働データを自動で収集して遠隔地にあるモニターやパソコンなどで確認することが可能です。
これまで人が行ってきた定期的な巡回点検や記録などの作業を自動化できるため、作業員の業務負担削減につながります。設備の稼働監視に充てていたリソースを削減することで、限られた人材を有効に活用できるようになります。
②異常予兆を検知して設備停止を防止できる
カメラやIoTセンサから収集した設備の稼働データを常時監視して、正常値と異なる動きの兆候検知と異常通知をすることが可能です。
目視では判別が難しいパラメータのわずかな数値変動を検知できるため、故障や性能低下の兆候を早期に把握して迅速な対応を行えます。
これにより設備停止を未然に防止できるほか、不良率の低減やメンテナンスの最適化などにつながり、生産性の向上にも結びつきます。
③リアルタイムで稼働状況を可視化できる
稼働監視システムを導入すると、各設備の稼働状況をリアルタイムかつ連続的に可視化できるようになります。
パソコン・タブレットを用いて正確な稼働状況をグラフ・数値で確認できるため、生産工程にある問題の早期発見につながるほか、工場の稼働率や設備停止時間の分析などに役立てられます。
稼働監視システムを選定するポイント
稼働監視システムの導入目的や既存設備の状況などを踏まえて、効率的な運用につながるシステムを選定することがポイントです。
導入目的や既存設備と適合しているか
稼働監視システムの導入には、各設備から稼働データを収集してシステムに集約するITインフラ環境を整備する必要があります。
限られた予算で稼働監視の自動化を実現するには、自社の導入目的や既存設備と適合しているシステムを選定することが重要です。
▼目的
どのような目的で稼働監視システムを導入するのか、解決したい課題・目標を踏まえて監視対象とする設備や取得するデータを明確にする。
▼既存設備
大がかりな改修工事や設備の入れ替えを行うことなく、既存設備へのカメラ・IoTセンサの設置が可能か、データを収集・集計するためのネットワークを構築できるか確認する。
拡張性があるか
稼働監視の対象となる設備数や取得したいデータの種類に応じて、柔軟に機能・規模を拡大できるか確認します。
拡張性の高いシステムを選定することにより、新たな設備の導入またはリニューアルを行ったり、監視範囲を広げたりする際にスムーズに稼働監視の環境を整えやすくなります。
また、優先的に稼働監視を自動化したい生産工程からスモールスタート(小規模での運用開始)できるシステムを選定すると、費用対効果を検証しながら段階的に導入を進められます。
稼働データの整理・分析に対応しているか
稼働監視システムの導入を通して設備の安定稼働や生産性の向上を実現するには、稼働データを分析して問題点の改善につなげることが欠かせません。
稼働データの収集・蓄積だけでなく、各種データの加工・分析を通じてボトルネックの特定や問題の要因解析ができるシステムを選ぶことが必要です。
なかでも“設備停止や品質不良の原因”を解明することは、工場の稼働率を高めるための改善策を考えるうえで重要なポイントとなります。
『アットフィールズテクノロジー』では、問題の要因特定に役立つデータ解析サービスを提供しています。目的に合わせたデータ解析アプローチにより、設備停止や不良発生の要因を特定できます。
▼データ解析アプローチの例
- 常時監視するデータと要因特定に使うデータを分ける
- 事象別の因果関係をドリルダウン形式で分解して原因を特定する
- 移動平均化によるデータクレンジングで時系列データの変動と因果関係のあるパラメータを抽出する
- 生産フローの各段階で不良率検出のグルーピングを行い、異常発生の工程を特定する など
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
まとめ
この記事では、工場における設備の稼働監視について以下の内容を解説しました。
- 設備の稼働監視を行う目的
- 設備の稼働監視に関する課題
- 稼働監視システムで実現できること
- 稼働監視システムを選定するポイント
工場の設備を安定稼働させて高い生産性を維持するには、稼働監視を行うことが欠かせません。稼働監視システムを導入することで、稼働データを自動で収集してリアルタイムの稼働状況を把握できます。
故障・性能不良の兆候を検知して設備停止を未然に防げるほか、作業員の負担軽減、稼働実績データの分析よって課題の改善策につなげられます。
『アットフィールズテクノロジー』では、稼働監視システムで収集・蓄積したデータを加工・分析して問題の要因を解明するサービスを提供しています。単なる稼働監視の自動化ではなく、不良率や設備停止回数の低減に結びつくシステム運用基盤の構築をサポートいたします。
データの収集や解析についてはこちらの資料をご確認ください。