
製造業の品質向上とは? 主な課題と品質向上のポイント
製造業に携わる方のなかには、「現場改善をしても定着しない」「人材不足で品質管理が追いつかない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
一方で、品質向上の取り組みはコストや工数の増加、現場の混乱など新たな課題を招くケースも少なくありません。
本記事では、製造業における品質向上の重要性や、現場で直面しやすい課題、品質向上のポイントなどを解説します。
目次[非表示]
- 1.製造業における品質向上とは
- 2.製造業の品質に潜む主な課題
- 2.1.人材不足
- 2.2.データ管理体制の不備
- 3.品質向上に向けた取り組み
- 4.最新技術とDXを活用した品質向上のポイント
- 5.品質を向上させる業務プロセスと今後の課題
- 5.1.現場改善を継続的に定着させるための体制構築
- 5.2.今後の課題への対応策
- 6.まとめ
製造業における品質向上とは
製造業における品質向上とは、製品やサービスの品質を高めるために、工程や管理体制、従業員のスキルなど、あらゆる側面で継続的な改善を行うことです。
製品やサービスの品質は、顧客満足度や企業の信頼性、競争力に直結するため、単なる不良品の削減だけでなく、全体最適を目指した取り組みが求められます。
近年は、グローバル化や多様化する顧客ニーズに対応するため、従来の品質管理手法に加え、デジタル技術や自動化の導入も進んでいます。品質向上は、企業の持続的成長に不可欠な経営課題といえます。
製造業の品質に潜む主な課題
製造業の現場では、品質に関するさまざまな課題が存在しています。例えば、工程ごとのバラつきやヒューマンエラー、設備の老朽化、データ管理の不備などが挙げられます。
また、近年深刻化しつつある人材不足の問題も、さらなる課題を生み出す原因となっています。
これらの課題を解決につなげるには、現状を正確に把握しつつ、各課題に適切な対策を講じることが重要です。
人材不足
近年、製造業では人材不足が深刻化しています。また、人材不足によって起こる課題に関しても懸念されています。
▼人材不足によって起こる課題と影響
課題 |
影響 |
ノウハウの属人化 |
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ヒューマンエラー |
|
工程のバラつき |
|
人材不足によって、知識の継承や人材育成に十分なリソースを割けず、ノウハウの属人化、ヒューマンエラーが発生しやすい状況に陥ってしまうことが課題です。
また、現場でのコミュニケーション不足や情報伝達ミスが重なることで、工程のバラつきや手順の不徹底による不良品の発生など、品質低下に関わるトラブルを招く恐れがあります。
データ管理体制の不備
品質管理においては、正確なデータの収集と分析が不可欠です。しかし、現場ではデータの不足や記録の属人化、管理体制の不備が課題となっています。
▼データ管理の不備による主な課題
- データの収集・分析体制が不十分
- 紙ベース管理による記録ミスの発生
- 部門ごとに情報が分断されて共有できない
- 業務プロセス全体の効率低下 など
データの収集項目が統一されていなかったり、分析ツールが整備されていなかったりすることで、必要な情報が正確かつタイムリーに把握できません。
その結果、改善の効果検証や意思決定が遅れ、課題の発見や対応が後手に回ります。
また、紙ベースでのデータ記録や、手作業によるデータ管理では、記録漏れや入力ミスが発生しやすく、トラブルの早期発見を妨げる原因となります。
さらに、情報が部門ごとに分断されていることで、全体最適な改善活動が難しくなり、業務効率の低下にもつながります。
品質向上に向けた取り組み
製造業の品質向上のためには、工程全体の最適化や従業員の意識改革、標準化の推進など、多角的なアプローチが求められます。
5Sと標準化による現場の最適化
現場改善の基本は5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動です。5Sを徹底することで、作業環境が整い、ミスやムダの発生を防げます。
▼5Sの項目と取り組み例
項目 |
取り組み |
整理 |
必要な道具や資材だけを残し、不要なものを取り除く |
整頓 |
使用頻度や動線を考えて、道具や設備を分かりやすく配置する |
清掃 |
作業場所や設備をきれいに保ち、不具合を早期に発見できるようにする |
清潔 |
整理・整頓・清掃の状態を日常的に維持し、快適な環境を保つ |
しつけ |
定めたルールや手順を守る習慣を従業員全体で身につける |
作業手順やルールを標準化することで、誰が作業しても同じ品質を保てる体制を構築し、属人化の解消や教育の効率化、ひいては品質の安定化に寄与します。
QCサークルやPDCAサイクルによる継続的改善
品質向上に有効とされる取り組みとして、QC(Quality Control)サークル活動とPDCA(Plan・Do・Check・Act:計画・実行・評価・改善)サイクルの導入があります。
QCサークル活動は、現場の従業員が小グループをつくり、自主的に品質改善に取り組む活動です。不良品の原因分析や作業環境の改善など、身近な課題に対して改善策を立案・実行します。
一方、PDCAサイクルを活用することで、活動を一過性で終わらせずに、計画・実行・評価・改善を繰り返し、継続的に改善を進められます。
工程管理と一元管理システムによる品質保証体制の強化
工程管理の徹底は、品質トラブルの未然防止や不良品の早期発見に直結します。
近年は、工程ごとのデータを一元管理できるシステムの導入が進んでおり、リアルタイムでの状況把握やトレーサビリティの確保が可能です。
例えば、温度や圧力などの製造条件をセンサーで自動記録し、異常値が出た際にアラートを通知する仕組みを導入すれば、不良品の流出を未然に防げます。
工程管理とシステムの導入により、属人化の解消や異常発生時の迅速な対応、業務効率化を実現し、品質保証体制の強化につなげることが可能です。
教育と多能工化で現場力を底上げ
品質向上には、現場で働く一人ひとりのスキルアップや意識改革が欠かせません。教育・研修を充実させることで、新人から熟練者まで同じ基準で作業でき、属人化のリスクを抑えられます。
また、多能工化を推進すれば、複数の工程を担当できる人材が育ち、繁忙時の柔軟な人員配置や業務効率化が可能になります。
▼教育と多能工化の取り組みと効果例
取り組み |
効果 |
新人向け作業標準の教育 |
|
工程ローテーションの実施 |
|
従業員が自主的に改善提案を行える仕組みを整えることで、現場発の改善が継続的に生まれ、組織全体の品質向上につながります。
最新技術とDXを活用した品質向上のポイント
近年、AIやIoT、デジタル技術の進化により、製造業の品質向上手法も変化しています。
工程の見える化や自動化、データ分析による現場改善など、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が競争力強化のカギとなっています。
最新技術を適切に活用することで、従来の課題を根本から解決し、より高い品質保証体制の構築が可能です。
AIとIoTを組み合わせた工程の見える化
IoTによって製造現場のデータをリアルタイムに収集し、AIで分析・判定することで、工程の監視や改善を効率的に進められます。
例えば、センサーやカメラによる自動検査、設備の稼働状況の可視化により、異常の早期発見や不良品の流出防止が可能です。
▼工程の見える化で期待できる効果
- 異常の早期検知
- ミスの削減
- 改善スピードの向上
また、データを蓄積・活用することで、工程ごとの課題抽出や改善策の立案も効率的に行えます。
システム導入によるデータ分析・現場改善
生産管理システムや品質管理システムを導入することで、現場データの一元管理や高度な分析が可能となります。
▼システム導入前後の違い
従来の管理 |
システム導入後の管理 |
経験や勘に依存 |
データに基づく判断 |
情報が部門ごとに分断 |
データの一元管理 |
問題発生後に対応 |
傾向を分析して予防 |
これにより、品質トラブルの傾向把握や再発防止策の立案、現場改善のスピードアップが実現します。
また、データに基づく意思決定が可能となり、属人的な判断から脱却できます。
デジタル化推進で実現する品質保証・検証の省力化
デジタル化を推進することで、検査や記録などの作業を自動化し、現場の負担を軽減できます。
▼デジタル化による効果
取り組み |
効果 |
AIによる画像検査 |
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IoTデバイスによる自動ログ保存 |
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製造履歴のデジタル管理 |
|
また、デジタルデータを蓄積・活用することで、トレーサビリティの強化が可能となり、品質保証体制の高度化に直結します。
品質を向上させる業務プロセスと今後の課題
品質向上を持続的に実現するためには、業務プロセス全体の見直しに加えて、現場改善活動の定着が不可欠です。
また、今後の課題として、人材不足や設備の老朽化、属人化の解消などが挙げられます。これらの課題に対して、組織的な体制構築や最新技術の導入、教育体制の強化など、総合的なアプローチが求められます。
現場改善を継続的に定着させるための体制構築
現場改善を一過性の活動で終わらせず、継続的に定着させるためには、経営層が明確な方針を示してリーダーシップを発揮するとともに、現場が自律的に取り組める環境づくりが重要です。
▼具体的な取り組み例と効果
取り組み |
効果 |
品質改善方針を年度方針に明記 |
改善活動の方向性を統一 |
改善提案コンテストや年間表彰制度 |
従業員の主体性・モチベーションの向上 |
改善事例を社内ポータルで公開 |
組織全体での効率・品質改善の加速 |
これらのように、改善活動を評価・表彰する制度や、改善提案を積極的に受け入れる風土づくりも重要です。
改善活動の成果を全社で共有し、横展開することで、組織全体の品質レベルの底上げが期待できます。
今後の課題への対応策
製造業における品質向上には、先述の人材不足をはじめ、設備老朽化、作業の属人化、データ管理体制の不備といった課題が立ちはだかります。
これらに対応するためには、課題ごとに適切な施策を組み合わせることが重要です。
▼課題と対策のまとめ
課題 |
対応策 |
人材不足 |
|
設備老朽化 |
|
属人化 |
|
データ管理体制の不備 |
|
また、これらの課題は単独で起こるのではなく、相互に影響し合います。そのため、複数の施策を組み合わせて実施することが重要です。
まとめ
本記事では、製造業の品質向上について以下の内容を解説しました。
- 製造業における品質向上とは
- 製造業の品質に潜む主な課題
- 品質向上に向けた取り組み
- 最新技術とDXを活用した品質向上のポイント
- 品質を向上させる業務プロセスと今後の課題
製造業の品質向上は、現場の課題を正確に把握し、現場改善や標準化、最新技術の活用などの多角的なアプローチが不可欠です。
継続的な改善活動と組織的な体制構築により、競争力のある高品質なものづくりを実現しながら、今後の課題となる人材不足や属人化、設備老朽化などに対しては、DX推進や教育体制の強化など総合的な対策を講じることが重要です。また、データ管理体制の不備を改善する際は工程の見える化やシステムの導入が求められます。
製造業における品質向上の第一歩は、現場のデータを正確に把握することです。
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